新潟県十日町市内にある森の保育園と水沢保育園の統合に伴い、新しい園舎「認定こども園あおのもり」を建てることになりました。
こどもたちにとって、園舎は暮らしの一部です。
これから変化の激しい時代を生きるこどもたちが、その子らしく幸せに生きてゆくには?
どういった学びや経験、驚きや感動を共有し、提供できるか?
十日町だからできる保育や教育とは?
建築士として、父として、深く考える期間となりました。
こどもたちは純粋無垢な感性とエネルギーのかたまりです。たくさんの「感じる」経験が、その子を豊かにしてゆくように思うと同時に、十日町にはそれができる環境や文化があります。それをカタチにしていくためにどうしたらよいか。
新園の運営法人である森の保育園の園長先生や理事長先生から、今までの環境や考え方をお聞きしたり、先生方と意見交換をしたり、いろいろな場所も見に行きながら、保育の現場に携わる方々と多くの時間を積み重ねてきました。
その中で生まれたコンセプトは「感性の解放」でした。
まずは木造であること。そして地面に近い園舎であること。
十日町の冬を考えるとどうしても地面から離れがちですが、今回の計画では雁木で園舎を囲んだり、水沢という地名にもなっている「水」を消雪に利用させてもらったりして、雪との良好な距離感を保つことを心掛けました。
もうひとつは、こどもたちが自分たちで遊びを生み出せる空間であること。
保育室の中でもない、外でもない、廊下や雁木といった中間領域を広く計画することで、さまざまなシーンでいろいろな遊び方をこどもたち自身が創造していけるようにと願いを込めました。
感性が解放され、寝そべってみたくなったり、撫でてみたくなったり、寄り添ってみたくなったりして、もっともっと、この世界にあるものを感じてみたくなるように。
地域の皆様へのお披露目会では、
こどもたちが無垢の木の床に頬ずりしたり、床を泳いだり…
回廊式になった遊戯室をめいっぱい走ったり…
帰りたくないと泣いてくれたり…
こちらが泣きそうでした。そして、少しほっとしました。
保育園関係者の皆様、この機会をいただきありがとうございました。このような素晴らしい場づくりに仲間入りさせていただけたこと、本当に感謝の気持ちでいっぱいです。
施工関係者の皆様、大変お世話になりました。十日町の技術力の高さはやっぱりすごいですね!
そして、設計チームの皆様、長い期間一緒に仕事ができて楽しかったです。本当にありがとうございました。
父となり、こどもたちの未来のために何かできることを、と考えていた私にとって、この度皆様とご一緒できたことは一生の思い出であり、おおきな財産です。
これからの地域を担う子どもたちの明るい声が、4月からこの園舎に響き渡る日がとても楽しみです。
(2019年12月)